2021年度の最低賃金は、全国平均で28円を目安に引き上げとなり、2002年度に時給で示す現在の方式となってから過去最大の引き上げ額となりました。 |
2021年10月からの地域別最低賃金は右表のとおりです。昨年はコロナ禍の影響で全国平均1円の引き上げのみにとどまり、据え置きとなりましたが2021年度は28~32円増(伸び率3%)と大きく引き上げとなりました。
政府は、より早期に全国平均で時給1000円を目指す考えを表明しており、最低賃金の上昇が来年度以降も見込まれています。
コロナ禍で一部の業界は、雇用を守ることが厳しいといわれる中、政府が最低賃金の引上げにこだわる理由は何でしょうか?その一因を次でご紹介します。
「最低賃金の引き上げ」に取り組む政府の目的のひとつとして、労働生産性の向上が挙げられます。
日本の労働生産性は、主要先進7ヵ国で最下位の状況が続いています。一方、日本の少子高齢化による生産年齢人口の減少は、他国に比べ一層深刻です。よって、今の労働生産性の水準だと、生産年齢人口の減少に伴い、日本経済の大幅な縮小が見込まれます。政府は、これらの対策として「最低賃金の引き上げ」を急いでいるのです。
最低賃金と労働生産性には、右図のように強い相関があります。生産性が上昇して労働者1人が生み出す付加価値が増加すれば、その増加分の一部は賃金に分配されます。したがって、生産性の向上を達成するには、この循環を作り出すことが鍵となります。「最低賃金の引き上げ」は、逆の発想として、賃金を引き上げることで、経営者が生産性を上げるように誘導する手段のひとつです。経営者にとって厳しい政策ですが、今後の日本において最低賃金の引き上げは免れず、継続的に遂行されれると予測されています。