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所長のコラム -Vol.16-

バブル時代と現在のインフレ

 

  “愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ”という格言があります。その経験も30年もすれば忘れてしまいますね。そもそも今の若者は先の太平洋戦争もよく知らないし、30数年前のバブルも経験はしていませんね。


  “1980年代は異様な時代だった。地価が暴騰し、貨幣の価値が基準を失って高揚し、世の中の座標軸はすべて狂い始めた。バブルの幕開けである・・・。”これは当時を描いた映画の冒頭のナレーションです。日本という国土には限りがあり、人口増加や大家族主義から小家族主義へと変わりつつあった日本は、マイホームを求めて建築ラッシュ、限りある土地を求めて我先にと土地を買い地価は高騰しました。東京都の地価を足すとアメリカ全土の地価に等しいと言われ、日本のマネーは世界中の土地建物を求めて奔流しました。勿論、国内では株も暴騰、絵画やゴルフ会員権など、あらゆるものが投機の対象になり暴騰しました。すさまじいバブルです。国はこれを抑えるため金融機関の貸出に規制をかけます(総量規制)。すると急転直下、バブルがはじけるのです。多くの人が損をし、企業は不良資産を抱えることになりました。一方で借金は残っているので、この返済に長い間苦しむことになります。中には倒産する企業も出てきて、金融機関にとっては不良債権の山となり、多くの金融機関が倒産、または政府の特別融資で救済されるという事態になりました・・・、この事実を若者にも知っておいてもらいたいと思うのです。

 

 さて、今の物価高騰(インフレ)をどう見るか?

 

 アメリカでは6月、9.1%の消費者物価上昇ということで、これは雇用の増大・実質賃金の上昇による需要の増大が原因(デマンドプル型インフレ)ということで、国内景気を冷やすため貸出金利の引上げを図っています。さて日本はどうか。雇用の増大・実質賃金の上昇が見られない中での物価高騰、その原因は円安による輸入物資の高騰、コロナ・ウクライナ戦争等による供給不足(コストプッシュ型インフレ)と言われています。いわゆる景気が低迷している中での物価高騰(スタグフレーション=悪いインフレ)です。国民がますます苦しくなることは必定ですね。今の日本では金利を引き上げて円高に誘導することもできません。そんなことをしたら企業は益々疲弊し、国は借金大国ですから金利負担に喘ぐことになるでしょう。

 

 それに加えて自然災害の多発(地球温暖化)、人口の減少など将来への不安は尽きません。ここは一つ企業人が工夫によって生産性を向上させ、且つ、値上げによって儲け(付加価値)を増大させ、実質賃金の上昇を図るという方策しかないと思うのですが・・・。