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所長のコラム -Vol.22-

今年の景気の見通しは・・・?

 

 投機筋と日銀が激しいつばぜり合いを演じているとマスコミが騒いでいます。市場は金利がもっと上がるだろうと考えているのに対し、日銀は何とか低金利のままで抑え込みたい、このせめぎ合いです。金利が上がるとどうなるか?金利が固定されている国債の価値が下がります。そこで今のうちにということで国債を売りに出します。売りが多ければ国債の価格はどんどん下がります。そこでこれをさせまいと日銀は市場に出てきた国債をどんどん買います。結果、国債発行残高の半分以上は日銀が所有するに至っています。

 

 ところで日銀が国債を買うとはどういうことか?

 

 国債には、インフラ整備に充てられる建設国債と赤字補填に使われる赤字国債(いわゆる政府の借金)があります。インフラ(公共的な道路や橋や下水道など)は将来にわたって使われるものなので、建設国債も政府の借金には違いないのですが、これは60年かけて返済するとなっています。国債は銀行や保険・年金機構などが主に買います。国債の発行残高は1,066兆円(令4.9末)、国民一人当たり860万円の借金を抱えていると言いますが、貸しているのは国民(銀行は国民の預金を運用している)なので、国民一人当たり860万円の債権(=貸付金)を持っている、とも言えるわけです。

 

 この国債を日銀が買うとはどういうことか。日銀はお金を発行する権限をもった唯一の機関です。つまりお金を刷って銀行等に渡します(政府が税金を使って返済するのではなく、日銀がお金を刷って肩代わりする)。これは日本国に流通するお金の量を増やすことになります。するとどうなるか。お金の価値が下がってインフレになる・・・?

 

 これはインフレの必要条件ではありますが十分条件ではありません。インフレは需要と供給の力関係で決まります。今は戦争によるエネルギー資源の高騰、円安による輸入物価の上昇、コロナによる流通網の寸断など供給側の問題でインフレ傾向にありますが、需要サイドは人口減少、高齢化・消費マインドの低迷等で力強いものではありません。アメリカのように賃金の高騰、政府のコロナ対策によるバラマキ(?)等もあって需要サイドが旺盛で、景気を冷やそうと躍起になっている状況とは大いに違います。これだけ長い間(黒田日銀総裁になって10年)、低金利政策を続け景気を刺激してきましたが、底流としては、需要サイドは盛り上がらず、供給過多の状況にあります。つまり日本はデフレ基調にあると認識しています。

 

 では今年の日本の景気はどうか。

 

 消費者物価の見通しは1.6%の上昇(昨年度は3.0%、来年度は1.8%)、経済成長率は1.7%の伸びを見込んでいます(昨年度は1.9%、来年度は1.1%)、これが日銀の見立てです。中国の減速、アメリカの高金利政策を思うと日本が1.7%も成長するのかと疑問に思いますが、貴方様のお見通しはいかがでしょうか?