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所長のコラム -Vol.17-

生産性の向上なければ賃上げなし

 

 言わずと知れた賃金の元手になるのは、企業が産み出した付加価値です。この付加価値の一定割合が賃金として社員に分配されます。この割合のことを労働分配率と言いますが、業界によって違いがあるとはいえ、同じ業界であればどの企業でもだいたい一定です。だとすれば、同じ社員が同じように仕事をして産み出す付加価値が同じだとすれば、賃上げはできませんね。


 ところで政府は“賃金を上げろ、上げろ!”と叫んでいます。最低賃金も上がりますね。ではこの意味するところは何か。労働分配率を業界平均よりも上げれば、企業の競争優位性はなくなります。結局、付加価値を上げるしかありませんね。


 企業は常に一定ではありません。社員の数も常に変動していますし、ワークライフバランスを重視した働き方改革によって、一人当たりの労働時間は減る傾向にあります。そこで企業は一人当たり付加価値を求めます(これを労働生産性と言います)。あるいはもっと厳密に「時間当たり労働生産性」を指標として使います。なぜならこれが賃上げの目安になるからです。人が増えて付加価値が上がっても、賃金を上げる理由にはなりません。労働生産性が同じだとすれば、賃上げの余地はないことになります。つまり政府が“賃金を上げろ、上げろ!”と言っているのは、“労働生産性を上げろ、上げろ!”、と言っているに等しいのです。(内部留保を取り崩して賃金に回せ、という議論もありますが、これは一部大企業の話ですね)

 

 ではどうすれば労働生産性を上げることができるのでしょう。人を減らして同じだけの売上を上げる等と言う暴論(余剰人員を減らすことは暴論とは言えませんが・・)は置くとして、

1.一人一人の働き方を見直して製品を多く作る、売上を上げるようにする。
2.イノベーションによって(髙付加価値の)新たな製品やサービスを世に送り出す。
3.機械化やアウトソーシングによってコストを削減する。
4. 顧客に値上げをお願いする・・・。                                   

  これらはすぐ思いつくところですが、・・・『言うは易く、行うは難し』ですね。

 

 一方、円安やウクライナ戦争、コロナ等によって生産者物価指数(卸売物価指数とも言う)はどんどん上がっています(令4年7月、前年比8.6%、1~7月平均、9.3%)。何もしなければ生産性は下がるばかりですね。さて、あなたは賃上げ圧力にどう対処いたしますか?