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所長のコラム -Vol.18-

決算書からの訴え!

 

 仕事柄、多くの決算書に目を通します。これが日常的な自分の仕事です。個人の決算は2~3月に集中しますが、法人の決算月は各社違いますので、毎月20~30社の法人決算書に目を通します。この会社は今どうなっているのだろう、という関心をもって見ています。すると決算書が自分に訴えかけてくるのです。決算書が叫んでいるのです。

 

1.「売上が伸びないのです、どうにかして下さい!」(売上高成長率)

 売上高の拡大は事業の根幹です。事業によってはコロナの影響もあり一概に言えませんが、売上が伸びないということはその事業が社会から見捨てられつつあるということの証明です。5%の拡大は必須です(日本のGDPの伸び率×2)。


2.「儲からないのです。どうにかして下さい!」(売上高営業利益率)
 本業の儲けである営業利益が赤字では始まりません。『儲からない企業は害悪である』、これはドイツでは社会の共通認識だそうですが、日本でも3期連続赤字では銀行も相手にしてくれませんね。じゃ赤字でなければ良いの、と言えばそうではありません。企業の価値は利益率の高さによって評価されます。上場企業の例で恐縮ですが、売上高営業利益率の平均は日本が9%、米国は15%、日本企業の評価が
低い理由です。

 中小企業の場合、8%の利益率を死守すること。そこに達しなければ経営努力が
足りないと決算書は訴えているのです。

 

3.「役員報酬が低すぎて生活できません!」(科目内訳書)
 小規模企業の場合、役員報酬をいじることで利益を操作できます。そこで税務署は期中での役員報酬の増減は原則認めていません。一方銀行は役員報酬が低ければ、その分利益を割り引いて考えます。基準は月50万円、年間600万円です。これは何としても守りたい額ですね。これより多い場合は企業規模、利益の状況に応じてふさわしいものであればアッパレですね。高すぎるのも問題ありですが、中小企業の場合、そんな企業は見当たりません。


4.「お金が無くて、いつもアップアップです。何とかして下さい!」(自己資本比率)
 資金繰りに追われている状況ほど哀れな企業はないですね。余裕があれば資金繰りに頭を悩ませることも、銀行交渉に労力を使うこともありません。「そんなことは分かっている、そう出来ないから苦しいんだ。」、と社長の声が聞こえてきます。松下幸之助がダム経営(余裕のある経営)を講演会で説いたとき、それが出来ないから困っているんだ、と会場から失笑の渦が沸き起こったそうです。それでも
彼は「ダム経営に心掛けよ!」と叫び続けました。それは自己資本比率に現れています。社長の心掛け次第だと私も思うのです。