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所長のコラム -Vol.36-

バブルの時代

 

 日本国中が熱に浮かされるように物を買いあさった時代がありました。狭い国土、土地は有限だから値下がりすることはないという『土地神話』。これに煽られて、国民は早いもの勝ちで、目を皿のようにして売り物件を探し、買い漁ったものです。買う資金については銀行もどんどん貸出しました。時には土地の価格の100%、中には120%ぐらい貸し出した例もあった様に思います。株もどんどん上がっていましたから、“株を買って、売って、その儲けで海外旅行へ行こう”などというキャンペーン。中には“アメリカの土地・家屋を買いに行こう”という不動産業者が企画したツアーまでありました。日本全国の土地価格を合計するとアメリカ全土のそれに匹敵すると言われていました。アメリカ・ニューヨークのシンボル、ロックフェラービルが日本人の手に落ちたのもこの頃かと思います。『日本アズNo.1』と言われ、世界第2の経済大国として、日本のマネーは世界を席巻していました。ソニーがアメリカ3大映画会社の一つコロンビア映画を買収したのもこの頃です。

 

 国内でのマネーの行き先は美術品や貴金属、骨とう品にまで及んでいました。ゴッホの“ひまわり”が30数億円で落札されたというニュース、ゴルフ会員権もどんどん値上がりしていました。銀行はゴルフ場の回し者かと思われるほどゴルフ会員権を売りまくりました。融資付きで売り出した訳です。多くの優良企業は1つならず、2つも3つもゴルフ会員権を持つことになりました。


 経済も成長していました。オイルショック(1970年)から立ち直った日本は高度経済成長を20年も続けていました。『5%の売上げ増、そんなものではダメだ。10%の売上増を達成できて普通なんだよ』、と我々も問いて回ったものです。これが未来永劫続くものと皆信じていました。もっとも一般の国民がそこまで踊らされていた訳ではありません。踊らされようにも資金がないので、これらの現象を横目で見ている他ありませんでしたが・・・。


 そしてある日、バブルがはじけました。きっかけは政府が「銀行が融資できる金額」に上限を設けた(総量規制)からです。これをきっかけに上がり続けていたものが高止まりすることなく、買手がつかずじわじわと値下がりを始め、過剰融資のツケが回って銀行は不良債権を多く抱えることとなりました。多くの銀行が潰れ、証券会社も潰れました。不良資産を抱えた企業や個人は借金を返すため一転節約志向になりました。国民も将来を憂えて貯金はしてもお金を使おうとはしません。経済は低迷し、物価は上がらず(デフレ)、賃金も上がらないという悪循環に陥りました。こうして30年が経過して今日に至ります。


 その間、政府は何もしなかった訳ではありません。今度は一転、企業や国民にお金をばらまき始めました。いわゆる超金融緩和、マイナス金利時代の到来です。それが再び失敗に帰し、今一大転機を迎えていることは皆さんご案内の通りです。甘やかされていた時代の終焉、これからはお金を借りれば金利を払わないといけない時代、お金を借りれば金利以上の儲けを出さないといけない時代、厳しい淘汰の時代が始まろうとしています。