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所長のコラム -Vol.28-

考えるということ

 

 日本人はあまり考えないのではないか。丹羽宇一郎氏(伊藤忠商事再興の祖、社長・会長を歴任、後中国大使に就任)はそう言います。その証拠として、彼は若者の自己肯定感が各国と比べて著しく低いことをあげています(内閣府が2 0 1 8年度に行った若者の意識調査)。ではなぜ日本の若者は自己肯定感が低く、自信がないのか? その理由の一端は日本の教育にあると彼は言います。欧米では幼少期から課題を与えて自由に考えさせるという教育を積極的に行いますが、日本では決まった答えを押し付け覚えさせるばかりで、自ら進んで課題に取組むような教育は行われていない。その結果、己がどう生きるべきか等を深く考えず、結果自己肯定感が低いのだと結論付けています。

 考えないから自己肯定感が低いのか、将来に希望が持てない日本社会だから己の生き方が見出せない、従って自己肯定感が低いのか私には分かりません。しかし丹羽宇一郎氏の次の言葉には賛同します。
 

 「しっかりとした人間の器をつくるには、なによりも自己肯定感は不可欠です。自信の大本となる自己肯定感が高いほど器は安定し、知恵と経験を積むほどに、それは大きく広がっていきます。しかしながら自ら考え、自発的でなければ、大事なことは身につきません。」(丹羽宇一郎「人間の器」より)

 


 では考えるとはどういう事か?


 丹羽氏の言うように物事を覚えるだけでは神経細胞(ニューロン)に記憶させるばかりですね。考えるということは、その記憶されたものと別に記憶されたものを結びつける、新たな神経回路を作る作業であるということでしょうか。

 

 ところで最近のチャットA I(C h a t G P T)はすごいですね。コンピュータの中で一定の神経回路が出来上がっており、大概のことには答えてくれるようですね。「山陰地方に2泊3日で旅行したいのですが工程表を作って下さい」と打ち込んだら、瞬時に回答(工程表とその解説)が出てきました。これは便利ですね。


  しかし、しかしですね。いかにC h a t G P Tが便利でも、それはあなたではありません。あなたはあなたの神経回路を持たなければ、あなたが生きたということにはなりません。「われわれの人生は、われわれの思考によってつくり出される。われわれの思考が現在をもたらし、未来を決める。人間は考える葦である。」(パスカル)
 

 

 最後に、ビジネスに携わる我々にとって、考えることは特に重要であると思うものです。