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所長のコラム -Vol.34-

GDP日本4位転落?

 

 2023年度の名目GDPで日本はドイツに抜かれ、世界4位に転落することが確実になったと報道されています(世界第2の経済大国から2010年には中国に抜かれて3位となっています)。これは相当ショックな話で、失われた30年、とうとうドイツにも抜かれて日本はもはや経済大国ではない、普通の国になってしまったと思わせる記事ですね。そこで経済をろくに勉強したこともない素人ですが、今回はこれに反論したいと思います。

 

 そもそもGDP(Gross Domestic Product)とは「1年間に国内で生産された財・サービスの総額」を表したもので、その国の経済力を表すものとされています。サービスには公共サービス、医療、通信などあらゆるものが含まれますが、家事労働やボランティア活動などは計上されません。

 

 ところでこれは国内で生み出された財やサービスの総額です。日本のように海外に進出し、海外で生産されたものは、その国のGDPには入りますが日本のGDPにはカウントされません。その額は膨大なものであろうと推測されます。

 

 次に、外国との比較ではドルに換算して比較されます。日本は低金利政策を経済運営の柱にしていますので、為替レートは常に円安ドル高の状態です。しかも海外で稼いだお金を円に換算せず、現地通貨で持つ傾向にあります。円の需要が少なく円安になりやすいのです。そんな為替レートで比較することに意味があるのかと思います。購買力平価で比較してはどうでしょうか。一人当たりGDPが仮に日本の10分の1の途上国であっても、日本人の感覚で10分の1しか所得がないと考えてはいけません。日本のほうが、はるかに物価が高いからです。また逆に日本よりもアメリカなどは、はるかに物価が高いのです。IMFの推計では購買力平価でみると1米ドル=90.6円です。

 

 最後に生産が増大しても、価格が上がってもGDPは増大します。まったく生産が増えなくても物価が上がれば、それだけでGDPは増大してしまいます。しかし、そうした形でGDPが増えてもまったく意味がありません。そこで物価の変動を織り込んだ、実際の生産を表す実質GDPが計算され用いられます。経済成長率に使われるGDPはこの実質GDPです。最初に戻って下さい。ドイツとの比較は名目GDPによるものです。ドイツではウクライナの侵攻によってロシアからの安価な天然ガスが入ってこず、インフレがすさまじいと聞いています。そんな名目GDPと比較しても意味はないと思います。

 

 以上、日本はまだまだ世界に冠たる経済大国であると言えるでしょう。しかしながらバブル崩壊後、実質GDPの伸びが低水準であることは明白です。現状に満足し、チャレンジ精神を失ってしまったためでしょうか。いや、それよりも企業の海外移転、国内の空洞化、人口減少が大きく影響しているものと思われます。ドイツやイギリスなどは移民の流入などで就業者数が増えるばかりでなく、人口も増えているといいます。どちらが良いかわかりませんが、外国人材の受入れ、移民問題を含め、徹底した議論によって“日本の将来のあるべき姿”を明確に示すことが、今求められているように思います。